「フリーブックス」についてもう少し踏み込んで書く

「フリーブックス」というサイトが最近ネット上で人気を博しています。昨日もはてな匿名ダイアリーでの「フリーブックスとは一体何なのか?」という記事が話題になりました。

フリーブックスとは一体何なのか?
http://anond.hatelabo.jp/20170501041533

記事にもあるように、要するにフリーブックスとは電子化した漫画の海賊版をアップロードしているサイトで、私はこのはてなの記事自体はとてもよくできているなーと思ったのですが、実は私も数カ月前からこのサイトを追っていて、そこでわかったこのサイトの運営と思われるグループについてなど、もう一歩踏み込んだ情報をこれに付け加える形で書き記したいと思います。

※なるべくわかりやすく書いたつもりですが、専門的な単語も含まれているかもしれません。わからなかったらごめんなさい。あと長いので時間のあるときに読んでください。

漫画ファイルの流通元について

まずフリーブックスについて知らないという人は上記のはてな匿名ダイアリーの記事を読んでください。

元記事には、

まずフリーブックスには自作ポエムのような作品は一切ありません。理由は簡単でアップロード機能がないからです、アップロードというページはありますがこれはただのハリボテです、実際に自作ポエムをアップロード出来た人間は存在しません。つまり投稿共有サイトというのはただの建前で完全に一方通行、作品をアップロードしているのは全て運営です。

とありますが、これはおそらくその通りで、漫画の画像ファイルはプログラムで自動でかき集めていると思います。フリーブックスのドメイン自体去年の12月に登録されていて、それからまだ半年も過ぎていないのにもかかわらずサイトには5万件ものファイルがアップロードされているのはありえないからです。しかし、発売日や作家名など、ところどころプログラムでは対応しづらい部分がきちんと編集されている点を見ると、人の手によるものもあるのではないかと思います。

漫画ファイルの出所については、「Kindle Unlimited」から流しているとの話もありますが、ある漫画のページにはこのような画像がありました。
http://file1.fbk.is/PuvpdV3MUU/PuvpdV3MUU_93.jpg
manga-zone.org

わかる方にはもうわかったかもしれませんが、別の海賊版の漫画を扱う manga-zone[.]org というサイトが、「自分のサイトが第一流通元である」ということを示すために自サイトのURLを記載してアップロードしたファイルがそのままフリーブックスでも掲載されています。つまり、フリーブックスは manga-zone[.]org もしくは別の誰かが manga-zone[.]org がアップロードしたものを再びどこかにアップロードしたものを掲載していると考えていいでしょう。しかし流通元がこれだけであるかどうかは疑問で、もしかすると他の海賊版の漫画を扱うサイトや、Kindle含む他の電子書籍サイトから流しているのかもしれません。

誰がフリーブックスを運営している?

運営者について、元記事では

公開されていた情報(Whois)から分かることは
同じような形態で成年コミックや同人誌を違法アップロードしている「ドロップブックス」というサイトと同じ運営者であり他にもいくつか日本人向けのアダルトサイトを運営しているということです。同一人格が保持していると思われる他のドメインのWhois登録情報によればヴァージン諸島に存在する、おそらくペーパーカンパニーによって運営されていることになっています。

とありますが、まあ、フリーブックスの運営とドロップブックスは同じです。「サイトデザインが似ている」というの主な理由ですが、これだけでは弱いのでいくつか理由を列挙します。

  • サイトで使われているフレームワークが同じ(CakePHP)
  • 書籍個別ページURLの構造が同じ
  • サイトの管理画面の構造が同じ
  • ネームサーバーが同じCloudflare
  • サーバのIPアドレスは違うが、サーバ会社は同じ
  • ドメインの登録業者も同じ

など、挙げたら他にも色々ありますがまあ同じであることはほぼ間違いありません。という訳で私も fbk.is 及び dropbooks.tv のWhois情報を参照したのですがドメイン登録業者の名義になっていました。これ自体は特に驚くことではありません。しかし、dropbooks.biz という別のドメインでは以下の名義になっていました。

Registrant Contact Information:
Name Ekavi Williams
Organization NOAH INTER NATIONAL LTD
Address 2nd Floor, Wickhams Cay I
City Tortola
Postal Code 0
Country VIRGIN ISLANDS, BRITISH
Phone +49.90000
Email info@dropbooks.tv

.biz なので .tv とは別ですが、メールアドレスの部分が同一なので所有者は同じとみています。名義もドメイン登録業者のものでもないと思います。そのまま見ていくと、この登録者はイギリス領ヴァージン諸島の「ノア・インターナショナル」という会社の「エカヴィ(?)・ウィリアムズ」さんという方のようです。「外人さんか!」って感じになるかもしれませんが、そんなわけもなく、これはペーパーカンパニーの名義です。ヴァージン諸島はペーパーカンパニーの多い国として有名なちいさい国です。「パナマ文書」「タックスヘイブン」とか聞いたことのある方も多いと思います。つまりこれは本物の所有者ではありません。もっと言えばフリーブックスの運営がわざわざヴァージン諸島にペーパーカンパニーを作ったかどうかも怪しい話で、タックスヘイブンとして有名な場所の住所と適当な名前で登録しているのではないかと私は考えています。

そしてこの「NOAH INTER NATIONAL LTD」で検索してみたところこの名義でこれらのドメインを登録していました。
noah-i.net, lecielblue.net, pornocloudy.com, adultpicks.net, purelove.info, upro.pics, encsystem.net

また、同グループが運営するサイトとして smv.to, animeleax.com, youflix.is, adultcity.to があります。

ノア社名義のいくつかのサイトは稼働していません。”noah-i.net” と “leielblue.net” は、この会社名義のメールアドレスとして使われていたドメインです。調べたところ、 “info@noah-i.net” というアドレスが存在し、このアドレスでサーバ会社やドメイン登録業者のサイトに登録し、フリーブックスやドロップブックスのドメインやサーバーなどを契約していたことがわかりました。

さて、ここで興味深いものを2つ見ることができました。まず1つに、上に挙げたドメインに “upro.pics” というものがあります。調べたところ画像アップローダーのようです。

UPRO│UPRO(あっぷろ)は無料で使えて匿名投稿の安心できる画像アップローダー。2ちゃんねるへの画像投稿にうってつけ!
https://archive.fo/OIafp

「2ちゃんねるへの画像投稿にうってつけ!」とは、もう言う必要もないかもしれませんが、日本人丸出しですね。更に調べたところYahoo知恵袋内でこれを熱心に応援しているユーザーを見つけました。
https://chiebukuro.yahoo.co.jp/my/myspace_ansdetail.php?writer=sowal0ve
https://chiebukuro.yahoo.co.jp/my/myspace_ansdetail.php?writer=ayanokoujiyukiko

2ちゃんねるにも「あっぷろ」の熱心なファンがいるようで、やたらとあっぷろのリンクを貼っています。



もちろん、 194.42.111.219 = ノア社の関係者かどうかは不明です。これ以上追求することはできなかったので、これについてはここら辺にしておきます。

更新(2日17時35分):”194.42.111.219″ ではなく “219.111.42.194” でした。ご指摘頂いた方ありがとうございました。

次に興味深いものの1つに、ノア社と思われるグループが日本のサーバーを契約しているという事実です。ノア社は主に海外のドメイン登録業者やサーバ会社と契約を結び、その決済にも匿名性のあるビットコインを使用し、身元の特定には細心の注意を払っているはずです。にもかかわらず日本のサーバーを契約していることがわかりました。
上で挙げたノア社名義のドメインに “encsystem.net” というドメインがあります。このドメインで何をやっているかはわかりませんが、これを辿ってみると 27.133.129.23 で、これは日本の「さくらインターネット株式会社」が所有するIPアドレスでした。さくらインターネットとの契約では本人確認が必要です。となると、ノア社はここで自身の個人情報を提供しているはずであり、これは捜査において重要な手がかりになるのではないかと思います。
まぁでもどうなんでしょうね。もしかしたら乗っ取ったサーバーかもしれませんし、ノア社名義のものだとしても名義人を用意して契約しているのかもしれません(わざわざそうする意味はないけど)。

「逮捕出来ないの?削除出来ないの?」という点について

元記事では、
「運営者を逮捕するのは非常に難しい。なぜなら、運営者自体が不明だから」「『DMCA』という削除申請の方法があるが、フリーブックスには効いてない」
とありますが、前者の法的な問題については、私も専門家でもないので何とも言えませんが、警察に頼るのは意味がありません。これは警察が無能だからだとかそういう意味ではなく、法的に縛られているためです。また、サーバ所在国の警察に掛けあっても無視されるケースが多いです。
DMCAについては、それの説明は省きますがこれはGoogleに対しては検索結果からサイト(URL)を削除させることは可能です。DMCAはアメリカの法律ですのでアメリカの企業であるGoogleはそれに従います。しかしフリーブックスのサーバーの所在国はブルガリアです。某所ではアイスランドだ何だと言われていますがアイスランドなのはドメインであってサーバー所在国とは別です。

調べたところサーバー会社はこの業者のようです。

OffshoreDedi™ | Host With Privacy
https://offshorededi.com/

“Host With Privacy” と謳っているところから見ると、顧客のプライバシーを重視しているのでしょう。決済もビットコインに対応しています。VPSのプランを見てみましょう。

Offshore VPS Servers | OffshoreDedi™
https://offshorededi.com/vps-hosting/

KVM, 512MB RAM, 20GB SSD, 100Mbps で月額10ユーロからのようですが、普通のVPSと比べれば高いです。ここで注目すべきポイントは「DMCA IGNORE」というところで、これは「第三者からサーバー会社にDMCAが届いても無視する対応を取りますよ」というもので、いわゆる「防弾ホスティングサービス」と呼ばれるものです。

日本が標的 サイバー犯罪支える「防弾ホスティング」:日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO86189130X20C15A4000000/

つまり、フリーブックスは最初からDMCAを無視する気マンマンでこの業者を選んだということです。GoogleへのDMCAはともかくフリーブックス自体からの削除は諦めたほうがいいでしょう。仮に消したところでまたアップするのが目に見えています。

記事で言及されている「カリビアンコム方式」についてはここでは省略します。

フリーブックスを閉鎖させる方法について

運営者の摘発という点で、完全に根絶やしにするというのは難しいでしょう。仮に海外で複数人が運営していたとして、そのうちの一人が日本で逮捕されたとしても残りのメンバーが海外で運営し続けます。FC2がまさにそれです。元記事では現地行政や警察権力の協力とありますが、そこにこぎつけるまでどれほどの労力を要するのか考えると想像できません。が、最近中国で漫画サイト運営者が逮捕された話では、倫理観ガバガバの中国当局がどうして摘発に乗り出したのかは不明ではあるものの、このようなケースもあるので一概に「無理」とは言えないのではと思ったりもします。ただ、前述の通りノア社は自身の身元特定には注意深いので捜査当局が動いても摘発は厳しいでしょう。

サイトブロッキングに関しては、現在の安倍政権で何度も検討されているようですが、実現には至っていません。この件のせいで進んだりしたら面白いですが。

著作権侵害、誘導リンクもダメ 知財計画に盛る
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS16H1Z_Y6A410C1MM0000/

DDoS攻撃については言及しません。やりたい方はご自由にどうぞ。

フリーブックスの収益

元記事では「フリーブックスに広告はない」と書いてありますが、ビューアで広告は出るようです。広告自体は同じグループが運営するドロップブックスでも掲載されているので、ダメージを与えたいのならばここで広告主の企業へのクレームなどで少しはできるかもしれません。
有料化プランについては元記事で初めて知りました。ただ金が絡んでくると決済代行をどうするかであったり他の障害が色々とあるので実現はしないと思います。手を広げればそれだけ摘発されるリスクも増えるでしょう。

まとめ

まず何か変な記事になってしまいすみません。そして元増田の方も勝手に色々付け足してすみません。ただ私も以前からこのサイトについては少し追っていて、ここの運営がタダモンじゃないとわかるとこれは背後に大きな組織がいるのではないかと妄想して楽しんでいました。
フリーブックスの収益については当初から色々と言われていたと思いますが、そもそもこのグループは架空請求業者と提携し、ドロップブックスにその広告を貼りつけて1件あたり数十万円の報酬を受け取るような犯罪者集団ですので、資金力はそれなりにあるのではないかと思います。関係ないですが、「アダルトシティ」の管理人からドメインを盗んで、自分らのサイトに転送するような連中でもあります。

犯人逮捕に繋がる情報募集
2006年から運営してきましたアダルトシティ ADULTCITY.TVが盗まれてしまいました。アダルトシティを盗んだ犯人の情報が欲しいので何が情報をお持ちの方はご連絡いただけると助かります。
http://adultcitycc.blog33.fc2.com/

さらに、サイト運営にまつわる知識についてもかなりのもので、私自身、オフショア(防弾)のホスティングやレジストラの知識はあると自負していましたが、このグループは2015年ごろから防弾レジストラとして名高いEuroDNSを利用していたり、今回のこのグループが利用している防弾ホスティングサービスであるOffshoreDediについてもこの件で調べているときに初めて知ったので、相当なノウハウを持ったグループだなと少し怖くなりました。人数も一人や二人ではないと(勝手に)思っています。
この件について個人的には海賊版に関する全体的な議論や業界の流れ、法整備、そしてこのグループ自体に興味があるのでしばらくウォッチしていきたいです。別にこのようなサイトを使うなとも広めろとも言いません。以上です。

更新(3日17時30分):閉鎖したようですね。

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“「フリーブックス」についてもう少し踏み込んで書く” への16件の返信

  1. アダルトシティの件は大体の犯人はわかってると思いますよ。

    最終的には証拠も出せなく何もできなかったみたいですが。

    やり手とは聞いてましたが、ここまでとは。

    1. ありがとうございます。こういうグループで運営しているところは人数も多いと思うのでそれだけ証拠も残してしまいがちなところはありますね。

  2. 高度にシステム化された会社のような組織がやってるんですかね?
    フィッシングもそうですが中の人は結局エンジニアなので、なんでそんな道に進んでしまうのか残念に思います

  3. はじめまして。閉鎖したというニュースを見てフリーブックスを知ったところなのですが、
    smvとかyouflixとかanimeleaxとかのしょーもないサイトと同じ(個々の人間は違うのかもしれませんが)とあったので、
    興味深いものがあります。
    さて、前掲したサイトではCloudFlareを使っていますが、動画のファイル自体はuk2groupに置いてるんですよね。
    CloudFlareもアメリカにあるのでDMCAの対象にはなるが転送を止めることはないスタンスなんですが、
    CloudFlareのこのポリシーって米国著作権庁から見て大丈夫なんですかね?
    アダルト業界から損害賠償請求なり犯罪行為の一部が日本で完結する体でいけるなら犯罪人引渡し条約に基づいて引っ張れそうな気がしなくもないんですが。
    あとはdlmm.toとの関連も気になったり。

    1. まあ世界レベルで見ればCloudflare使ってる映画ストリーミングサイトとかも普通に元気モリモリなので、これで平気ならJAVなんて鼻クソみたいなものなのかもしれません。ryushare摘発とかを見るに日本のアダルトビデオ連合はかなりの権力は持っていると思うのですが、国内のエロ動画サイトを抱き込んだりして傘下になっている部分は感じます(感じなだけ)。smv/animeleaxのノア社がどういう立場のグループなのかはわかりませんが特定自体難しいのでないでしょうか。

  4. ryushare摘発は日本のタレコミもあったかもしれませんが社会主義のベトナムでポルノ商売を派手にやったことが一番の原因です。
    知財関係の犯罪ではなく頽廃的な文化を広めたことに対する罪で逮捕されてますので。

      1. そうでしたか。
        いや、ヤフーニュースから先に見て、そのあとこっちの記事みて、結果、実に的確な分析だと感心した訳ですが。
        ヤフーニュースの方だけを見ちゃうと必ずしも印象が良く見えないんじゃないかと思ったもんで一応。

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